なぜ博士が後向きだったのか気になって。


三人は 満ち足りた気分で長い長い橋を渡っていた。

遠ざかっていく白亜の城には今でもたくさんの王様や王子、そして姫たちが優雅に過ごしているだろう。
Gオンに別れの挨拶をせずに出たけれど、いつかどこかでまた逢えるだろう。



今朝までの空腹がうそのように満腹だし、久しぶりに温泉にも入ったし 言うことなしだ。
軽く運動した後の心地よい疲れ。…あとはふかふかのベッドがあれば完璧なのだが、
目的があって旅をしている身なのでそうゆっくりもしていられない。

旅の目的は 毎度おなじみだが、

いたずらの王者になる
ゾロリ城を建てる
およめさんをもらう

の、三つである。


今回はお城にたくさんの姫が集まっていたので 三つ目をかなえるための大きなチャンスだったのだが、
Gオンの新しい一面を知り、からかいながら共に過ごすことに夢中になって それに気がついていないZロリだった。

なにより Gオンのすてきなママの前に、他の姫たちは完全にかすんでしまったのだった。


Zロリたちが外堀の長い橋をゆっくりと渡っているその時、
城を抜け出したGオンは 堀の地下にあるトンネルを疾走していた。
Gオンが幼いころ 遊んでいて偶然みつけたこのトンネルは 城の地下から堀を抜けて森へ通じている。
誰にも見られずに城を出るために Gオンには なくてはならないものだった。

Zロリが城を出るとわかった時
早く帰れという態度をとっていたことを後悔した。
そばにいたいのに、なぜ逆のことを言ってしまうのだろう。

こうなればいつものように偶然を装い、

「やあ。また逢ったね」

などと言ってしばらく一緒の時間を過ごそう。そうしよう。そうに決まった。



Gオンは先に森に到着し わくわくしながらZロリを待ったがなかなか現れない。
待っているあいだに今日のできごとが次々と脳裏に浮かぶ。

「おまえが城の外でした、あんなコトやこんなコトを ママに言ってもいいのかぁ〜?」

そんな言葉についあせってしまったが、
考えてみると ママに言えない いけないことなどあまりしてはいない。
あの言い方がいかんのだ。考えていると腹がたってきた。


森の木々を見ているうちに Gオンにいたずら心が起こってきた。

木の上に登って、ここをZロリが通った時に驚かせてやろう。
いたずらの王にいたずらをしかけてやる。

Gオンは近くの手ごろな木にすばやく登った。おあつらえ向きにツタがある。
Zロリが来たら、ターザンのようにいきなり飛びかかって 驚く顔を見てやろうと、
子供のようにときめきながら、その時を待った。





やがてZロリたちは橋を渡りきり、森へ入ってきた。

月の光を受けて輝く水面に、夢のように浮かんだ白亜の城から、ゆっくりと自分たちの日常に還る。

「そうだな。こんな月明かりの下で眠るのも悪くない…」

月を見上げるZロリの顔は まるで森の中に咲いた花のようだった。 

(なんて…なんて美しい…)

もっとよく見ようと 一歩踏み出したGオンは そのまま宙に舞った。
Zロリにみとれて、ここが木の上だということを すっかり忘れていたのだ。
気づかれてはいけない。声を出さないようにするのがせいいっぱいだった。
ツタはよけいな枝にからまってしまい、なんとか音を立てずに着地したが、
体勢を立て直すことができずに よろけた勢いで背中からZロリにぶつかってしまった。


「おまえ、また城を抜け出してきたのか!?」

頭の上からZロリの声がする。こんな近くにZロリの顔がある。

待っていたよZロリ。また逢えたね。
心でそう思っても、Gオンはまた 違うことを言ってしまうのだ。


「ふ…美しい月に誘われてな…」                                                       



そして 木の上から驚かすことについては 秘かにリベンジを誓うのだった。

おわり。