逢えるといいね

「お、おかしいな…あれ??え〜と、確かに……ここに…あれ??」

何度確認しても、そこに名前は見つからない。

「も、申し訳ありません!Gオン様!!すすす、すぐに確認の上、地上に戻れる手続きを…」

地獄に来ているとはいっても、やましいところが1つも思い当たらないGオンは実に堂々としていた。
指1本動かさずとも相手を屈服させてしまう 王者の風格の前に
名ばかりの王である閻魔などは 思わず敬語になってしまう

「その手続きには、どのくらいかかる?」

「え、え…明日までには…」

「遅い。他に方法はないのか」

「ほ、他には…こ、この地獄の中から7つ選んでクリアすれば生き返れます」

目の前のモニターには 血の池 針の山 などの地獄ライブが映し出されている。

「しかし、クリアするのは至難の技です」

食い入るようにモニターを見ていたGオンが、はっと声をあげた。
地獄の中に、忘れもしない姿があったのだ。

「あれは…Zロリ?…いや、…にしては動きが…まさか…まさか あれは…ッ」

「あれですか?あれはSロリというもので。…あれに関しては大変な目にあいました
手違いでZロリという者を地獄に連れてきてしまって…」

Gオンは思い出した。何度目かの旅の時に出会ったZロリが、巨大なタコヤキから出てきたことを。

「地獄と天国をめぐって 帰ってきたのさ」

あまりにも不思議な現象に混乱するGオンに こともなげにそう言っていた。

その後城に戻ったGオンは Sロリが留守中に突然爆発して壊れてしまったことを とても悲しんだものだ。

ZロリはSロリと間違えられて、地獄をめぐる羽目になった。
それがわかった今となっても、Gオンの心に釈然としないものが残る。

「Sロリは私が作ったものだ」

「えっ?…あれは、Gオン様が…」

「まだ完成してもいなかったのに突然爆発した。…地獄に来ているだと?…なぜだ…なんの罪でそうなるというのだ」

「あっ、あの…それはですね、…私の上の神が決めているので…その、…わ、私には…何とも…」

しどろもどろになっている閻魔大王に 碧い視線が 射るように注がれている。
はっきり言って、Gオンは 怒らせると とても怖い。

「上の神とは…界王様か?」

「あ、あの、それは作品が違うので」

「Sロリはまだ完成していなかった。なんの罪も犯してはいない」

Gオンは悲しげに目を細めて モニターに見入っていたが、我にかえったように言った。

「罪があるとすればSロリの罪ではなく、私の罪だろう。今すぐ行くぞ!」

Gオンはすぐに7つの地獄を選び、リストを閻魔に差し出した。
許されないかもしれないが、Sロリに会って 詫びを言いたい。
もちろん 巻き添えにしてしまったZロリにも。

幼い頃から鍛えている上に、今最大に気合が入っているGオンには、
灼熱の地獄も 極寒の地獄も たいしたことはなかった。

針の山に入った時、はるか上の方にSロリの姿を見つけた。
しかし 信じられないことに そのそばには自分の後ろ姿があった。

地獄をいくつか過ぎてきて、幻覚を見るようになってしまったのかと思ったが、
近づくにつれ、それがロボットだとわかった。

「私の姿を作るとは…Zロリだな…」

そのロボットの造形、動きのクセなどを見るまでもなく、それは明らかだった。

二体のロボットから 声は何も聞こえない。
未完成のSロリには まだ自発的に話せる機能はなかった。
おそらくメカGオンも話せるようには出来ていない様子だった。
それでも二体のロボットは…SロリとメカGオンは互いに手を取り 庇いあい 仲睦まじく針の山を登っていく。
二人の間には言葉など必要ないのだ。

場所などどこでもかまわない。ずっとずっと一緒にいたい。そう夢みてきたGオンは
目の前の光景にただ魅入られていた。
Zロリが自分のロボットを作っていたことに Gオンは胸を熱くした。

しかし さらに近づいた時 事情が変わった。
メカGオンに追いついた瞬間 Gオンは思わず二度見してしまった。
後ろ姿はそっくりだったのに、なんとメカGオンは だらしな〜くニヤけた顔をしていたのだ。

「わ、私は…私はZロリの前ではこんなカオになってしまっていたのかアァァァァ〜!!!!
いくらZロリがかわゆいといってもこれはヒドイ!ヒドすぎるウゥゥゥゥ〜」

…てな風には思わない。
Gオンは自分の美しさを十二分に自覚していた。ただ某キツネのようなハデなナルシストじゃないだけだ。

「おのれ、Zロリ!許さんッッ!!」

その後Gオンは文字通り鬼のように地獄を進み、選択したすべての地獄を新記録でクリアした。







地上に戻れる喜びよりも 怒りで興奮しているGオンの怖さに、生き返らせる担当の鬼は震え上がっていた。

「お、お、おおおめ、おめでとうございます。しん、新記録ですので特別に特別に、お好きな場所を選べますので…」

Gオンはその目を怒りに燃やしたまま、口だけを不自然に曲げた。
それは笑ったと言えるのだろうか 耳まで裂けた紅い口の中に ずらりと並んだ牙を見て、鬼はおうちへ帰りたくなった。

「好きな場所で復活できるのか」

ならば 場所は決まっている。Gオンは すっと目を細めてつぶやいた。

「では行くぞ Zロリ。…お仕置きの時間だ」




おわり